FTC(econsumer.gov、電子商取引の消費者保護一般)
在米国大使館 三田紀之
日時:2002年4月4日(木)
先方:Pablo Zylberglait,
   Legal Advisor for International Consumer Protection,
   Bureau of Consumer Protection, Federal Trade Commission (FTC)

1.econsumer.govについて
(1) 概要

・誰でもアクセスできるpublic site(http://www.econsumer.gov)と、政府関係機関のみがアクセスできるgovernment site(Consumer Planet Sentinel)からなる。
・public siteでは、消費者の一定のフォームにより苦情を登録し、これをgovernment siteのデータベースに蓄積している。このデータベースは、そもそもFTCが消費者保護執行機関等からの情報に基づいて作成していたデータベース(Consumer Sentinel)を活用し、国際的なデータベースとしたもの。
・public siteでは、この他、安全なオンラインショッピングのチップ集、IMSN(The International Marketing Supervision Network)メンバー国の消費者保護政策及び機関の紹介を実施。
・一方、government siteでは、各国の執行機関が苦情データベースにアクセスし、このデータに基づきルール策定や執行方針の決定等に役立たせたり、個別ケースの執行につなげたりすることとなる。また、各国の法制等についてのライブラリーも、各国の政策遂行の一助となることとなる。
・データベースでは、このような目的に資するため、苦情登録フォームに基づき、消費者や事業者の所在国、苦情の種類等が検索できるようになっている。
・ただし、このデータベースから自動的に各国の機関に通報がされるわけではなく、利用するか否か、どう利用するかは各機関の任意。したがって、寄せられた個別の苦情の取扱いも各機関による。
・このため、public siteにおいても、消費者に対して、個別の苦情に対して、各国機関が何をするかは全く保証されない旨書いている。
・この点については、消費者にとっては苦情を登録しても意味がないとの議論があることは認識しており、2月に開催したラウンドテーブルでまさにこの点を議論したところ。((3) 参照。)

(2) 実績

本稿は、FTC担当者との面談において得られた情報を、筆者個人の責任においてとりまとめたものである。
・IMSN29カ国(+OECD,EC)中、15カ国(+OECD)が参加。日本からは、内閣府、国民生活センター、公正取引委員会、経済産業省が参加。
・昨年4月に開始して以来、今年1月まで、毎月1万〜2万のアクセスがあり、苦情も800件弱登録。
・苦情の種類としては、オンラインショッピング(26%)、オークション(18%)、コンピュータ・ソフト関係(17%)が多い。地理的には、やはり米国関係が多い。ちなみに、日本消費者からの苦情、日本企業に対する苦情、ともに数件あった。

(3) 2月のラウンドテーブルでの議論

1) 総論
・2月27日に、本件に関するラウンドテーブルをワシントンで開催した。日本からは出席無し。ここでは、消費者にとって意味のあるものとするために、サイトのあり方、特にADRプロバイダーとのリンクのあり方が議論された。
・サイトの一般的なあり方については、すぐに出来ることとして、各国が寄せられた苦情にどう対応するかの説明をより改善し、また紛争防止のための教育を充実するとともに、苦情に関して消費者が自ら何ができるか教育する(self-help education)ことが重要であり、このためのマテリアルを提供する方向で議論が行われた。(イメージとしては、FTCサイトのようなもの)
・消費者が自らできることとしては、具体的には、クレジット会社による保護(チャージバック)、事業者へのコンタクト、ADR、訴訟、政府への報告、マークやシール、事業者団体の活用等がある。

2) ADRについての議論
・今回のラウンドテーブルでの最大の議論は、ADRとのリンクの問題。消費者が紛争解決のために、どこに行けばよいかをどう示すかという問題。ただし、議論が難しいことは予想され、中長期的課題との位置付けではあり、FTCから、論理的に考え得る選択肢はすべて提示してみた。
・考え方としては、パイロット的に各国がADRプロバイダーを指定(1国2以上)するアプローチ、一定のガイドラインに適合するか否かを開示させ、その状況を一覧表(Disclosure Matrix)にして表示する、あるいは適合ADRだけリンクするというアプローチ、その他様々な考え方がありうる。

・具体的な方法に即してみれば、以下のように様々な選択肢が考えうる。

Yellow Pages Approach
FTCのプレゼンテーション資料(”econsumer.gov, econsumer Roundtable, Minor Frustration to Major Fraud“)参照
  →希望する機関はすべてリンク。消費者サイドの立場からすれば可能性は極めて低い。
Group Inventories Approach
  →個別の参加機関が提供するADR一覧にリンク。
Consensus Inventories Approach
  →複数機関のコンセンサスによるADR一覧(複数ありうる)にリンク。
Wizard Approach
  →検索エンジンによる自動的検索(指定とはいえないかも)
Designated Providers Approach
  →econsumer.govとして、一定のクライテリアに適合するADRを指定。
National Inventories Approach
  →加盟各国が一定のADRを指定

・一定のガイドライン・クライテリアについては、オンラインで処理可能とか、無料あるいは低コストであるとか、消費者は拘束しないとか、一定の開示をするとか例示では示しているが、全く詰めた議論はしていない。
・econsumer.govとしてこのようなリンクに合意できない場合には、少なくとも、消費者に対してADRについての教育・普及は行い、消費者自らがADRを探すことができるようにすることが考えられる。
・今回のラウンドテーブルでは、結局すべてのアプローチについて様々な議論があった。消費者サイド(及び一部のADR)からは、一定のクライテリア・ガイドラインを決め、これに適合するADRに限るということにしない限り、リンクには反対との意見が出された。一方で、ADRについては、まだクライテリアについてのコンセンサスが形成されている状況でもなく、それまで待つのか、これも難しいなという感じもあった。
・結局、今回のラウンドテーブルでは、何か方向が出たということではない。要は、将来の可能性について議論が行われたということである。
・また、今後については、いつまでにこの議論について結論を出すというようなことはない。特段スケジュールが決まっているわけでもなく、次の機会がある時に、本件について議論をするということとなろう。
2.ADR一般
(1) ADRに関するFTCの政策スタンス
・ADRについての政策は、現状では、消費者に対する普及・教育のみである。規制もしていない。もちろん、FTC法第5条(unfair and deceptive acts or practiceに関する一般的規制)を守ることを求めるのは当然。
・良いADRと悪いADRを選別する(一定のルールを作る)ことについても、現状では考えていない。B2CのADRは、ビジネスの進展等にも伴って、まだまだ発展途上にあり、その状況を見守っているところである。
・COPOLCOについても、現時点では、米国政府としての明確なポジションは形成されていない。
(2) 米国の主要なB2CADRについて
・(当方から、今後、各機関の話を聞いてみたいと思っているが、どのようなADR機関が米国では知名度が高いかと訪ねたところ)やはり、BBBやSquare Trade等であろう。また、今回のラウンドテーブル出席機関に当たって見るのも良いと思う。
・なお、Consumer Internationalが一覧を作っていると思う。また、OECDのプロジェクトとして、International Chamber of CommerceがADRのリストを作っているはず。
3.電子商取引の消費者保護に関するFTCのアプローチ
・一般的に言えば、法(FTC法)の執行、産業界及び消費者の教育、ビジネスの自主的措置の奨励が、FTCの基本的アプローチ。
・電子商取引に関して、特段の規制を設けているのではなく、現行の規制(FTC法、各規則等)を適用することで問題ないというのが我々の立場。
・規則については、例えばMail & Tel Order Ruleの30日以内の履行義務があるし、The Warrantee Ruleでは、保証を義務付けるものではないが、保証する場合には一定の説明義務を課している。なお、これらの規則違反は、Civil Penaltyであり、FTC法5条と直接リンクするものではない。一方、FTC法5条は、虚偽の表示(ウェブ上で消費者が支払額を誤認するような表示)等を規律。いずれにせよ、これらの一般的ルールの適用で、問題解決が図られている。
・一方、これらの適用に当たり、電子商取引特有の問題点もある。一つの例は、電子商取引では、利用者のコンピュータ(ディスプレイやブラウザ等のソフト)によって広告のクレームのサイズが大きく異なってしまうこと。これについては、”.com disclosure”という産業界の教育用のテキスト(マテリアル)を作っている。これ自体は、一種のガイドラインで拘束力はない。しかし、これはFTCの考え方を示すものであり、法第5条の解釈に当たっての指針となるものである。
・FTC法第5条のような極めて一般的な規定に基づく規制は、ビジネス実態や技術が変化する電子商取引においては、柔軟に対応できるという利点を有している。
一方で、間違って解釈した場合の影響は大きいことから、我々としては、きちんとした運用を行い、自らを律していくことが極めて重要である。逆に、きちんと運用していることにより、議会に対する変な立法圧力がかからないことにもなる。

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